抵当権を消滅させる2つの方法とは?抵当権消滅請求と代価弁済を徹底解説

不動産の売買や、不動産を借金の担保とする時などに「抵当権」という言葉がよく出てきます。

そして、抵当権には「追及効」という性質があり、抵当権の目的物である不動産が売却された場合にも抵当権が消滅することはなく、不動産の買主(第三取得者)は抵当権付きの不動産を取得したことになります。

従って、抵当権付き不動産を取得した第三取得者は非常に不安定な立場にあり、債務者が被担保債権の履行を怠ると抵当権が実行され、不動産の所有権を奪われることになります。

抵当権の消滅方法はなにがある?

民法では第三取得者の不安定な状態を解消する方法として、「抵当権消滅請求」と「代価弁済」という2つの方法を規定しています。

抵当権消滅請求とは

抵当権消滅請求は第三取得者が主導して行います。抵当権付き不動産の所有権を取得した第三取得者が請求し、第三取得者の提示した金額に対して抵当権者が承諾した場合に成立します。

なお、不動産の取得原因は売買、贈与、財産分与などなんでも構いません。

・民法第379条:抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

例えば、AはBに対して2,000万円の債権を所有していました。

そこで、AはBの所有する不動産に抵当権を設定し、それを登記しました。

その後、CがBから抵当権付き不動産を1,600万円で購入し、抵当権者Aに1,600万円の金額を提案して抵当権消滅請求をしました。

この時に、AがCからの請求を承諾すると、Cは1,600万円を抵当権者Aに支払うことで抵当権を消滅させることができ、所有権を保全できます。

そして、AのBに対する債権は無担保の400万円だけになります。

なお、CはAに対する抵当権消滅請求の支払いと、Bに対する購入代金の支払いを相殺するため、BC間での債権債務関係はなくなります。

1.抵当権消滅請求の手続き

抵当権消滅請求は第三取得者が抵当権者に対し、民法383条で定められた書類を送付することから始まります。

なお、書面は送付するだけでよく、その送付書面に対して事前に裁判所の許可を受ける必要はありません。

書面を受け取った抵当権者は2ヶ月の熟慮期間に抵当権消滅請求を承諾するか、競売を申し立てるかを選択しなければなりません。

仮に、債権者が期限内に競売の申立てをしない場合は、第三取得者の抵当権消滅請求を承諾したものと見做されます。

また、債権者が承諾できない旨の通知を第三取得者に送付したとしても、抵当権消滅請求の効力を失わせることはできません。

あくまでも、競売の申立てか、抵当権消滅請求の承諾かの二者択一しかありません。

・民法第384条:次に掲げる場合には、前条各号に掲げる書面の送付を受けた債権者は、抵当不動産の第三取得者が同条第三号に掲げる書面に記載したところにより提供した同号の代価又は金額を承諾したものとみなす。
一.その債権者が前条各号に掲げる書面の送付を受けた後二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないとき。

被担保債権の保証人からの抵当権消滅請求

抵当権付き被担保債務の保証人となっている人が、仮にBから抵当権付き不動産を買い取って第三取得者になったとしても、Aに対して抵当権消滅請求をすることができません。

それは、債務者や保証人、またその相続人は被担保債務を全額弁済すべきだからです。

・民法第380条:主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

抵当権消滅請求の可能時期

抵当権付き不動産の第三取得者は抵当権の実行された競売による差押えの効力が発生すると、その時点で抵当権消滅請求ができなくなります。

・民法第382条:抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

第三取得者が借地権(地上権)を購入した場合

第三取得者Cが土地の所有者Bから購入したのが「所有権」ではなく「地上権」であった場合は、債権者Aに対して抵当権消滅請求をすることができません。

つまり、仮に地上権を購入したCがAに対して抵当権消滅請求ができるとなると、Aが抵当権消滅請求を拒否した場合、当該不動産が競売に付されてしまう事態になります。

そうなると、Bは地上権だけをCに売り渡したのに、所有権まで侵されることになります。それを防止するために、地上権購入者は抵当権消滅請求ができません。

2.代価弁済

代価弁済は抵当権者が主導して行います。

・民法第378条:抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

代価弁済は抵当権者から所有権または地上権を購入した第三者に対して、お金を支払えば抵当権を消滅させるという提案をすることです。

あくまでも提案であるため、第三取得者はお金借りる即日などで代価弁済に応じる義務はなく、お金を支払って抵当権を消滅させることもできますし、提案を拒否して現状維持でいることもできます。

なお、代価弁済のできる第三取得者は所有権または地上権を購入した人であり、取得原因は「売買」に限られます。

また、保証人でも、所有権若しくは地上権を購入すれば、代価弁済をすることができます。

抵当権消滅請求と代価弁済の違いとは?

抵当権消滅請求と代価弁済の主な違いは以下になります。

 抵当権消滅請求代価弁済
誰から誰に所有権者⇒抵当権者抵当権者⇒所有権者または地上権者
取得原因なんでも可売買のみ
保証人・相続人不可
抵当権付きの不動産を所有すると、非常に不安定な立場に立たされます。速やかに抵当権を外す処理をすることが賢明です。